レンチキュラー3D印刷用にデザインを起こす際、知っていると役立つヒントをご紹介します。
3Dは「平面なのに飛び出して見える」からこそ思わず目をとめたり見入ったりする効果が狙える表現です。そのためお客様によっては「より目立たせたい」という意図でメイン素材を最前面に配置されることがあります。
ところが、レンチキュラー3Dは「効果が強ければ強いほど、画像がボケて見える(残像感が目立つ)」という特性があるため、一概に飛び出していれば良いというものではなくなってしまうのです。
以下ではサンプル画像を参考に「残像感」についてご説明します。
【図1】は、これから作成しようとしているレンチキュラー3D製品のデザインです。複数の人物画像を手前から奥に並ぶように配置しています。この時点で、元データはPSD(Adobe Photoshop)形式になっており、テキスト・各キャラクター・背景、と別々のレイヤーに分けた状態で保存されています。
※今回テキスト部分は検証の対象外です。
【図2】前後配置イメージ
【図2】は、各レイヤーを前後に振り分けた様子を俯瞰で見てみた状態です。それぞれの前後関係を把握していただけると思います。
※ただ今回はテストということでほぼ均等に並べています。実際の製品的に残像に配慮した設定を行う場合は、人物(手前4レイヤー)を「ゼロ地点(紙面とほぼ同じ=遠近のない位置)」に寄せて、背景レイヤーのみが強く奥行きにあるようなメリハリをつけた設定を行います。
それでは、実際の「残像感」とはどの程度のものなのでしょうか。
【図3】が、実際に製作したポストカードサイズのサンプルを写真に収めたものです(画像クリックで大きいイメージがご覧になれます)。中心の男性(ゼロ地点)に比べ、左右の人物がぼやけて見えます。
これは写真撮影における「ピント」の感覚に近い考え方ですが、見る側の心理としては、やはりピントの合った男性の方に視線が向いてしまうのではないでしょうか?
【図4】も現物ですが、今度は左側の女性をゼロ地点に合わせて製作したものの写真です(画像クリックで大きいイメージがご覧になれます)。【図3】との違いがお分かりいただけるでしょうか。また、女性にフォーカスしたことで全体的に奥行き寄りになり、右端の人物や背景のボケ具合がさらに大きくなっています。
それでは今回のまとめです。
レンチキュラー3D印刷向けのデザイン・レイアウトは、ただ単に既存の2Dデザインを流用するだけでは効果を十分に発揮できる保証がありません。メインの絵柄は、最も残像発生が小さい「ゼロ地点」付近に配置し、それをお膳立てするような装飾素材で前後をレイアウトしていく、といった方法が効果的な場合も多々あります。まさに2次元を超えて3次元的広がりと制限をデザイン段階でも取り入れていくことがレンチキュラー3Dの使命と言えます。
※ちなみに今回触れなかったテキスト表記に関して、小さな文字は3D効果による残像の影響で読めない・つぶれるなどのリスクが高いので、ゼロ地点に配置するか、大きめのサイズ(100lpiレンズ使用時は最低6pt以上)でレイアウトする、といった対処法をお試しください。